2011年10月23日日曜日

夜間痛を伴う肩関節周囲炎の患者さんを担当して

 原因不明の肩の痛みが発生し、肩関節周囲炎の診断を受けた患者さんを担当しました。肩はほとんど動かすことができず、特に肩の前面に触れるだけでも痛みが生じる程でした。夜間痛はあり、熱・発汗が生じ、ほとんど寝むれない状況でした。

 肩関節周囲炎の定義は、
「病理組織学的に関節包の慢性炎症を伴った肥厚と収縮であり、このような病態に対して、炎症部位に機械的刺激をかけないようにし、炎症の沈静化が最も重要となる。また、原因が明確でない拘縮肩に対する総称であることが多い。」
といわれています。

 実際の患者さんの肩をおおざっぱに確認すると、肩関節三角筋前部・中部、二頭筋、大胸筋や小胸筋の持続的な過剰収縮を触れて確認できました。相反する筋は低緊張で働く機会が得られにくい状況でした。アプローチとしては、
「防御収縮による二次的疼痛、そして慢性化・不眠による組織修復をする成長ホルモン分泌の低下を考慮する」
を参考にし、第一優先として、
   過剰収縮が起きない場面をつくり、
   睡眠が十分にとれること
に専念しました。

 リハビリではベッド上で過剰収縮が起きない姿勢コントロールの獲得やベッドアップの角度、ポジショニング、臥位で疼痛のないとり方を患者さんと確認しました。すると、次の日には痛みはほとんどなく、触れることやご自分で動かすことが可能となりました。リハビリで行った内容を注意することで、夜の痛み・熱・発汗もなく、よく眠れたとのことでした。患者さんもびっくりされていました。

 今回の結果から、
・夜間寝る姿勢によって関節内圧が変化し、それに伴って過剰な筋収縮が伴っていた・・・文献Ⅰ
・関節包の影響から関連痛として肩前面に痛みが生じていた・・・文献Ⅱ
・睡眠が十分にとれず、自律神経系の調節に影響をあたえていた・・・
と考察しました。

 肩の問題を考える要因は無限大にあり、この考察だけではほど遠く、むしろ検討違いの部分もあるかもしれませんが、私なりに文献と臨床を照らし合わせる作業をしてみました。
もしかしたら、病態そのものが急に改善した可能性もあったと思います。


文献Ⅰ:
関節内圧の正常は下垂位で-50cmH2O程度の陰圧を呈している。関節炎などが生じると、反射性筋緊張により内圧が上昇する。さらに関節包の容量や伸張性が低下して全可動域で内圧が上昇傾向を示す。
夜間痛に関連する因子として、肩峰下滑液包圧が挙げられ、姿勢によって圧が高くなる。


文献Ⅱ:
関節内圧の上昇により関節包に存在する関節受容器を刺激して疼痛が発生するとともに、周囲筋群の緊張性収縮を生じて更なる圧上昇の原因になる。
関節包からの求心線維と皮膚からの求心線維が脊髄後角の同一ニューロンに収束するため、関節包からのインパルスを脳では皮膚と認識する。







参考文献:


MEDICAL REHABILITATION no.79―Monthly book リハビリテーションにおける疼痛コントロール

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