2011年11月19日土曜日

リーチ動作における多関節運動学~筋活動の変化~

 前回のブログで、リーチ動作の話をさせて頂きました。


 今回の文献にも前回の内容と共通する重要な部分があると感じたので、紹介させて頂きます。
2つの関節の組み合わせ運動を遂行する際に、その原動力となる主動筋は、両関節周囲にあると述べられています。


ヒトが運動に入る際は、人間の構造上、多関節にわたって全身活動として表れます。


図は上肢のみですが、多関節運動下では、各関節動作の主動筋を一律に考えるのではなく、多様な活動と機能を考える必要があると述べています。


・等尺的に矢印の方向に力を発揮した場合、肩関節屈曲(三角筋前部)と肘関節伸展(上腕三頭筋)を組み合わせた押し動作となる。





・AとBでは同じ重量をもっても、矢印方向によっては原動力となる主動筋は最大活動を示すとは限らない。


・このように筋活動からみると、主動筋の中には、最大挙上重量に対する割合より低い活動しか行っていない主動筋が存在する→鍛えたい筋に対して有効な負担量になっていない場合がある。

 
 前回のブログの参考も加えることによって、この図も、物を持ったときの傾きや重量変化に対して、多関節に渡り固有感覚情報をキャッチし、脳が筋活動の微妙な割合をコントロールすることで成り立っているものだと私は考察しています。
 
 この文献から考えた場合、学生レポートに必要な検査にMMTがあります。

 もし、学生と同じ条件下で評価する立場となったら、今の私でも学生と同じ検査結果と考察の不一致が生じるかと思います。

 つまり、MMTの結果だけでは説明ができないことが多いとういことですね。


 学生さんを指導する難しさを痛感しています。

参考文献:

2011年11月13日日曜日

リーチ動作におけるplanning機能~固有感覚の重要性~

 日頃、上肢に対して、物を介した訓練と介さない訓練を行うことがあります。この違いにどんな影響があるのかを専門職として考えなければならないと思っています。が、日々患者さんの反応をみて考察する過程は、私にとってはとても難しい問題です。ボーっと文献を眺めていたら、1つ興味深い内容を発見することができました。
  今回は、何かに手を伸ばす時、神経学的にどのように成り立つかを調べていました。手の構え(プレシェーピング)は、物の形状を視覚的に捉え、その対象物の特徴を記憶と皮質でplanningされることで形成すると言われています。私の中ではこの時点でリーチ動作のplanningが成立するものと考えていました。
ordonGetzによると、
抹消の太い軸索群に神経障害を有する患者は、触覚や位置感覚、伸張反射がない。対象物に腕を伸ばしてつかむ時に目を閉じると、動いている腕からフィードバック情報が入らないため、正確な到達運動ができない(距離感のとり方を記憶しているのにもかかわらず)。また、彼らは到達運動のplanningができないこと研究で分かった。固有感覚の情報は、肢の状況を内的に再現し、刻々更新することに貢献する。

この話によると、絶え間ない更新がないと、動作を導くのに使われるplanning機能が起きなくなるようです。言い換えると、planning形成に必要な皮質の働きが起きなくなると考えることができるようです。これを考慮して患者さんを分析するとなると、最初から終わりまで、どのフェーズで失敗しているのかをしっかり見極めないといけないと改めて考えさせられました。でだしの手指・手関節か?その前の視覚か?記憶か?中間地点の肘の役割か・・・。


患者さんを簡単に高次脳(失行など)と決めつける私。この文献を読んで、とても無責任さを感じました。

参考文献:

2011年11月9日水曜日

呼吸と腹臥位の関係性

 くも膜下出血後重度の左片麻痺を呈した寝たきりの患者さんの体験話です。














 腹臥位を促したところ、普段端坐位もとれない方が、体幹(特に下部体幹)の可動性が呼吸とともに変化し、端座位もとれるようになりました。この患者さんは胸膜炎を一度起こして入院されています。












 腹臥位と呼吸リハビリの重要性について載っている文献に当てはめてみたいと思います(単に当てはめるのはいけないと思いますが、知識のない私にはまず学びのために・・・)。そしてこの本は注意障害の私にとっても非常に読みやすい本です。









・絶対安静・仰臥位のリスク
   肺胞動脈血分圧の低下
   肺内シャントの増加
   動脈血酸素分圧の低下
   機能的残気量の低下
   下側肺に生理的変化
   下側肺障害の発生
 






 寝たきりになると、繊毛運動が低下、気道内の分泌物貯留するようですが、これらは重力により特に背側にたまるようです。
















 背側の全域が抹消からつぶれてしまうと機能的残気量が低下し、換気ができなくなるようです。この状態が続くと肺内シャント血流が増加し、下側肺障害を発症する要因になるといわれています。

















この文献では仰臥位をできるだけ避け、可能な範囲で側臥位や腹臥位の反復をすることをすすめておりました。












 図では腹臥位によるメカニズムが分かりやすく載っていました。黒い部分は血液や水分が鬱滞した状態で、含気がない。仰臥位での上側には空気がたくさんあっても、背側にはシャントで炭酸ガスがたまってもガス交換ができない状態を示していました。






















この内容が、端座位がとれるすべての要因に当てはまったとは思ってはいません。たしかに体幹背部が大きく変化していました。それに伴い肩甲胸郭関節となる肩甲骨の動きも、座位における空間で定められる範囲が広がったことも大きな要因になったと考えています。

















動きを止められていた横隔膜や血流変化による臓器機能の影響も考えられるのでしょうか。今後も、寝たきり・肺疾患・心疾患などのポジショニングを検討し、どのような影響を与えていくことができるかを考えていきたいと思います。


















2011年10月31日月曜日

超効率勉強法①

仕事以外で活躍されている方の本をよく読むようにしています。世間で成功しているたくさんのヒトの考えを聞くことは、何事にも手っ取り早いと思ったからです。


 その一つに勉強法について述べている本を見つけました。勉強法に限らず、成功しているほとんどのヒトが同じことを述べていました。それは、
「朝型になること」
でした。朝型は頭の回転がよく、周囲の環境(テレビや友達とのメール・・・など)に振り回されない時間帯であり、とても勉強や作業効率が良くなるそうです。


 東大生のほとんどが朝型であると言われており、かつてサッカー日本代表で活躍していた釜本選手も、朝4時に起きてサッカーと勉強を両立してきたそうです。とにかく夜は寝ることだけを考えることが重要だと述べています。夜10時~翌日2時。この時間に寝れると脳や胃腸系の休息が最も効率的に得られるそうです。


 少し休もうとネットを開いたり、テレビを眺めていると、気づいたら2~3時間!!なんてことがよくあります。それが一週間で14~21時間・・・。人生は一回のみです。時間は貴重にしていきたいと思います。
 早速明日朝5時起き!トライしてみたいと思います。




2011年10月26日水曜日

介助者に必要な空間スペースをつくることの重要性について

当院OTでは、定期的に病棟スタッフに各テーマ事にレクチャーを実施しています。

前回は車いすについて、今回は入浴動作・ベッド上における更衣動作をテーマに実施する予定です。

今回のレクチャーでは、
「介助するための必要なスペースを考慮する」
ことを中心に更衣動作の実技体験も兼ねて述べていきたいと考えています。更衣動作に限らず、介助者としてすべての項目に必要と考えたからです。

とても分かりやすい文献があったので引用させて頂きます。

 図Aと図Bは前屈運動をしている場面です。

静止立位から前屈を行う動作は上半身を前に倒しますが、その時に下半身が後方に移動するそうです。この下半身を抑制する(図B)と、前屈運動自体が難しくなるのが図を比べてよくわかります。

トランスファーや方向転換、ズボン・靴の着脱などこの動きに似た動作を介助者はよく行うかと思います。


病棟で患者さんのベッド配置・レイアウトをみると、
「病棟に介入しているOT・介入していないOT」
がはっきり分かります。

当院のような古い病院環境では特にですが、スペースが広いリハビリ室だけでの評価は、限られた生活空間における患者さんの動きを把握しきれるものではありません。(と、私は思います)

病棟スタッフが介助しやすい環境作りも、患者さんに大きな影響を与えるため、OTに求められる必要なスキルであると考えています。新人OTさんにも少しでも伝わるよう、講義内容をしっかりと考えていきたいと思います。

2011年10月23日日曜日

夜間痛を伴う肩関節周囲炎の患者さんを担当して

 原因不明の肩の痛みが発生し、肩関節周囲炎の診断を受けた患者さんを担当しました。肩はほとんど動かすことができず、特に肩の前面に触れるだけでも痛みが生じる程でした。夜間痛はあり、熱・発汗が生じ、ほとんど寝むれない状況でした。

 肩関節周囲炎の定義は、
「病理組織学的に関節包の慢性炎症を伴った肥厚と収縮であり、このような病態に対して、炎症部位に機械的刺激をかけないようにし、炎症の沈静化が最も重要となる。また、原因が明確でない拘縮肩に対する総称であることが多い。」
といわれています。

 実際の患者さんの肩をおおざっぱに確認すると、肩関節三角筋前部・中部、二頭筋、大胸筋や小胸筋の持続的な過剰収縮を触れて確認できました。相反する筋は低緊張で働く機会が得られにくい状況でした。アプローチとしては、
「防御収縮による二次的疼痛、そして慢性化・不眠による組織修復をする成長ホルモン分泌の低下を考慮する」
を参考にし、第一優先として、
   過剰収縮が起きない場面をつくり、
   睡眠が十分にとれること
に専念しました。

 リハビリではベッド上で過剰収縮が起きない姿勢コントロールの獲得やベッドアップの角度、ポジショニング、臥位で疼痛のないとり方を患者さんと確認しました。すると、次の日には痛みはほとんどなく、触れることやご自分で動かすことが可能となりました。リハビリで行った内容を注意することで、夜の痛み・熱・発汗もなく、よく眠れたとのことでした。患者さんもびっくりされていました。

 今回の結果から、
・夜間寝る姿勢によって関節内圧が変化し、それに伴って過剰な筋収縮が伴っていた・・・文献Ⅰ
・関節包の影響から関連痛として肩前面に痛みが生じていた・・・文献Ⅱ
・睡眠が十分にとれず、自律神経系の調節に影響をあたえていた・・・
と考察しました。

 肩の問題を考える要因は無限大にあり、この考察だけではほど遠く、むしろ検討違いの部分もあるかもしれませんが、私なりに文献と臨床を照らし合わせる作業をしてみました。
もしかしたら、病態そのものが急に改善した可能性もあったと思います。


文献Ⅰ:
関節内圧の正常は下垂位で-50cmH2O程度の陰圧を呈している。関節炎などが生じると、反射性筋緊張により内圧が上昇する。さらに関節包の容量や伸張性が低下して全可動域で内圧が上昇傾向を示す。
夜間痛に関連する因子として、肩峰下滑液包圧が挙げられ、姿勢によって圧が高くなる。


文献Ⅱ:
関節内圧の上昇により関節包に存在する関節受容器を刺激して疼痛が発生するとともに、周囲筋群の緊張性収縮を生じて更なる圧上昇の原因になる。
関節包からの求心線維と皮膚からの求心線維が脊髄後角の同一ニューロンに収束するため、関節包からのインパルスを脳では皮膚と認識する。







参考文献:


MEDICAL REHABILITATION no.79―Monthly book リハビリテーションにおける疼痛コントロール

2011年10月13日木曜日

脳画像について:前頭葉~frontal association area~


 右視床出血・脳室穿破が認められ緊急入院となった患者さんのお話です。
 
 

 脳圧は更新し、入院時意識レベルは徐々に低下、左片麻痺、右側眼球偏位・両側下方偏位、構音障害が認められました。

 


 その後は両側EVDにて経過し、約2週間後にEVD抜去となりました。





 特に特徴的な症状がみられていたので、文献を照らし合わせてみました。その特徴的な症状は、

・眼球の両側下方偏位。常に下方を向いているため、前方に視線を向けるときは頚部を過伸展することになり、結果として重心は常に後方に位置します・・・SUNSET phenomenon

・病前はおとなしかった性格であったが、スタッフへのセクハラや暴力が目立つようになっていた・・・orbitofrontal syndrome(眼窩前頭症候群)











 EVD抜去後には、この2つの問題は改善されていました。





 文献を確認してみます。

<SUNSET phenomenon>
 頭蓋内圧が亢進することで、通常の頭蓋内圧亢進症状に加え、眼窩上壁が押し下げられる結果、眼球が下方に転移して下眼瞼の中に沈み込んだように見える。これを落陽現象と呼ぶ。

<orbitofrontal syndrome
 眼筒に面した前頭葉の障害による症状抑制により感情の起伏が激しく多幸性になるだじゃれや不適切な言葉,ひょうきんな言い回しをする(Witzelsucht)。
 おかれた立場の判断に乏しく,社会的行動上の問題や性的異常行動等を示す




 この二つの症状が改善した理由として、EVDによる頭蓋内圧が低下し、
・眼窩上壁に対する押し下げがなくなったこと
・視床と眼窩領域の前頭葉との連絡路が再開通したこと
と考察しました。



 眼球の動きが改善されると同時に、トランスファー二人介助を要していた患者さんが、監視レベルになりました。




 高次脳や視覚の影響ってすごいですね。





 今後は前庭系や視覚を含めた内容も取り入れていきたいと思います。


2011年10月6日木曜日

Trunk Muscle Activity in Two-Leg Standing To One-Leg Standing in Healthy Elderly Adults

この文献は、健康な若年者と高齢者を両脚立位から片脚立位へ切り替えた時のバランス実験を行ったものです。

何故かMMT4、5ある患者さんがいるのにバランスを崩してしまう、上手に歩けない、ズボンの着脱が上手にできない・・・などの臨床をよく経験します。

この文献は、筋活動には問題がない健康な若年者と高齢者を比較すると、高齢者の方がアンバランスであったと述べています。左図をみると、動作に移る500ms前の圧倒的な反応の違いがよくでています。




*task:右足を挙げる
GM:左中臀筋
OI:左内複斜筋
MF:左多列筋
IP:右腸腰筋

真っ先に患者さんをベッドに寝かせ、当たり前のように筋力訓練・・・。この図からみて、むしろ高齢者の方が腸腰筋の活動が高い時もあることから、筋力訓練程、神経を集中してかかわらなくてはいけないと思いました。よく見受けられる学生さんの発表に対して、
「MMT5近くあるのに、歩けないのはMMTの評価の仕方がまちがっているのでは?」
とスタッフが学生さんによく質問を投げかけています。

その話を聞くたびに私は、
「では、実際にMMT5であったら、あなたはこの方の問題をどう考えますか?」
と逆にスタッフに質問!!・・・しようかな。と思っている私がいます。
少し愚痴が入ってしまいました。すみません。
ADLなど実際に患者さんが動いている場面で、より細かく学生さんと一緒に分析・考えていけるセラピストになれるよう、明日も一生懸命頑張っていきたいと思います。

2011年10月3日月曜日

歩行における上肢の関連性






















 作業療法士が上肢をアプローチすることによって、何故か歩行が上手になる場面を遭遇することがあると思います。


















 対象者がADLに歩行を必要とするのであれば、作業療法士も歩行の分析が必要だと思っています。



















 臨床では、肩の痛みを伴う方が多く、歩行に必要な上肢のコントロールが不十分な方が多く見受けられる印象をもっています。





















 



















12は高齢者と若年者において、歩行時の上肢関節角度について研究された文献をみつけました。特に高齢者のほとんどが、
「肘が伸展しない・肩が屈曲しない」
ことがわかりました。











 このことによって、非麻痺側のヒール・コンタクトを阻害し、歩行スピードや歩幅にも影響していることを述べられています。私の臨床経験では、対象者は何故か、「非」麻痺側なのに、非麻痺側の臀筋や体幹の筋活動のタイミングがずれ、結果的にweaknessへ陥っているのではないかと考えることが多いです

















 外側系はもっと中枢よりにあると学生の頃から思っていました。



















 図3をよくみると、外側系はほぼ末梢の方にあるようです。内側系は体幹部分に加え、上肢でいえば前腕部分まで広く分布されています。




















 歩行も含め、応用動作におけるADL場面では、上肢を考慮した評価が必要不可欠なのだと改めて考えされられる図であると思っています。

















「廃用手=治療対象ではない」
 よく聞く言葉です。しかし、作業療法士として、本当にそうなのかをしっかり考えていきたいと思います。