2012年4月23日月曜日

手がトイレ動作や歩行に与える影響について~頭頂連合野~

・この患者さんは被殻出血の方で、注意や空間などにおける高次脳と、左片麻痺の問題を呈していました。

・特に手が開かず患者さん自身も気になっている方でした(感覚が過敏で痛みも認められていました)。手に積極的な方であることをポジティブな要素として、治療に取り入れていきました。

・トイレ時にズボンの着脱を行っていた際に、ふらつきが強く、転倒する危険性があり介助が必要な方でしたが、治療後の手の変化に伴い、ズボンの着脱が監視で実施できるようになりました。



ご自分で手を開こうと頑張りますが、余計に屈曲への抵抗を強める傾向にありました。











介入後は手の開排が可能になり、ご自分でも指を動かせる位になりました。

この後に触れても過敏性はなく、屈曲を強めることはなくなってきました。



・何故トイレ動作や歩行などにも変化がみられたのか。手との関係性はどうなのか考えていました。抹消からの問題が姿勢制御に重要な「上肢」そのものに影響を与えることは、とてつもない浅い私なりの考えがありましたが・・・。

・文献では、発達のプロセスにおいて、頭頂連合野の重要性について述べていました。サルの実験において5野と7野は、手の存在を通して、身体図式と空間認知の機能を担っており、赤ちゃんが仰臥位で空間に手を伸ばすことからこの働きがすでにはじまっていると述べています。

・今回、手が外界へ探索していくための体性感覚受容器に変化をもたらしたため、体性感覚情報(上肢や上部体幹など)や空間情報とを統合させる頭頂連合野に何らかの影響を与えることができたのではないかと、かなりポジティブな考えで、私自身をなだめてみました。

久保田競:手と脳~脳の働きを高める手
塚本芳久:臨床家のための発達科学入門.運動の生物学(2)

2012年4月12日木曜日

リーチ動作と把握運動

片麻痺患者さんの非麻痺側の把握運動時、なぜか物を下方に押し付ける傾向にありました。そこで文献を探していると、発達にそった内容が発見できました。

「大人は、対象物に手が届くと、持ち上げる段階で手から落ちない程度の力で掴む。これらの動作は触覚的入力に依存しているのではなく、物に触れる前から既に始まっている。」

「2歳以下の子どもは物を掴んでも持ち上げようとせず、下方へ押しつけてから持ち上げる傾向にある。」

と述べていました。片麻痺患者さん、発達の話・・・。この2つの話を無理やりにでも共通する部分を考えました。文献では「物に触れる前から既に」「片麻痺患者さんは大人」。う~ん。おそらく姿勢制御や蓄積された経験や運動学習によるものが含まれていると私なりに考え、片麻痺患者さんにかかわってみました。

①リーチ時に頭頸部の伸展から開始していたため、介入にて頭頸部の伸展が起きないような場面をつくると、物を下方に押し付ける反応がみられなくなった。
②その他の患者さんではもちろん方向によって反応の違いはあるが、繰り返していくうちにリーチ時の姿勢反応に変化がみられ、物を下方に押し付ける反応がみられなくなった。

①は、中大脳動脈領域広範囲の方で②は基底核の患者さんでした。
①は、リーチする前の構えを行うための手がかり(簡単にごまかしてしまうと安定性)が提供できたからなのでしょうか。他の文献によれば、首のすわらない赤ちゃんを、首を支えてあげるとリーチが上手になると述べていました。
②は、何度も行っていくうちに、自己と物との距離間を学習したのか、リーチ運動が効率的になっていました。これはリーチの軌跡に関与していると考えてよいのでしょうか。

話が変わりますが、今日英会話の寄り道にg・uという服屋さんで初めて買い物をしてしまいました。すごいですね。値段にとてもびっくりです。ユニクロよりも安く、デザインがかっこいい。服を買うときはこれからここでも良いと思いました。
目標としている海外留学・大学院に向けて、服以外でも上手なお金の使い方についてたくさん学んでいきたいと思います。

参考文献:

2012年4月1日日曜日

援助行動の生起過程と抑制要因について~社会心理学~

キティジェノビーズ事件 
 1964年ニューヨークで起こった婦女暴行事件。 深夜、帰宅途中のキティは自宅アパート前で暴漢に襲われました。叫び声にアパートの住人38人が目を覚ましこの事件を目撃していましたが、誰ひとり警察に通報せず、彼女を助けようともしませんでした。結局キティは死亡し、犯人は逃亡してしまった事件です。


 人は自らの利益を犠牲にしてまで他者を助けようとするときもあります。どのような要因が、人の援助行動を促進したり、抑制したりするのでしょうか。


 社会心理学者のラタネは、
「多くの人が知っていたのに助けなかったのではなく、多くの人が知っていたからこそ援助行動が起きなかった」
と主張し、ニューヨーク市民を他者への無関心やモラルの低下ではないことを述べています。


 以下はラタネの考える3つの援助行動抑制要因を挙げています。
1:注意の拡散
 周囲に人がいると注意が拡散するため、緊急事態が発生していること自体に気付かないことがある。
2:多元的無知
 事態が起こっていることに気付いていても、それが援助を要するほど深刻なものであるかどうかが明確でなくなってしまうもの。こうしたあいまいな状況では、人は他者の行動を参照しようとする。
3:責任の分散
 明白な緊急事態であるとわかったとしても、同じ状況に気付いている他者が周囲にいることにより問題の解決に対する個人としての責任感が薄れてしまう。この傾向は、傍観者の数が増すにつれて強まる。


 このことから、私たちが何かに巻き込まれた時、周囲の人の数が多ければ多いほど、このような事態になりかねない可能性があると考えられそうです。人が多ければ必ずだれか助けてくれる。そう思っていましたが、必ずとも人の数に伴って起こるものではなさそうです。


 遺伝子を視点とした生物学的に捉えると、多くの人の遺伝子を残すために、
「人を助ける」
という援助行動が生まれたと言われています。そう考えると、やはり人を助けることそのものが、私たちの利益にかなっていると考えられそうです。なので、何か困っている人がいれば、私は私のために、勇気を持って助けていきたいと思います。