2012年3月16日金曜日

運動印象の成立機構:Ⅱ

前回のブログで、実際に中枢に至るまでの処理はどうなっているのか。たくさんの方にご質問を頂きました。運動印象の成立機構には、神経心理学を基盤とした文献を引用しているため、神経生理学で説明するとなると私の憶測になってしまいます。そして、言えることが無限大に近いと思いますので、私の少ない知識でほんのわずかになると思いますが、述べさせて頂きたいと思います。
私の考えられることは以下に挙がりました。
・サッケード
・円滑追跡眼球運動
・前庭動眼反射
・眼球運動出力のエフェレンス写機構

例えば、頭を固定して本を左右に素早く動かすのと、本を固定し、頭を左右に動かすのでは全くみえかたが違うと思います。また、氷の上ですっころんでしまった場合、視野に移る風景は変わらず注視し続けることができます。

これには、見ようとする対象物が中心窩と呼ばれる視野の中心部に来るように眼球を無意識に回転することによって可能となるようです。

これらは上丘や視蓋脊髄路と前庭系が眼球追跡課題に重要な役割を果たしているそうです。その際に眼球をコントロールする6つの筋肉が調整されると言われています。しかし、前庭動眼反射はこの単体のみではわずかなブレが生じる説もあるようです。このブレをやはり小脳系が関与しているそうです。小脳系の患者さんはたしかに眼球や頭頸部を固定され、特に方向転換では全身の緊張を高めるのをよく観察されます。

最後に、眼球を側方へ動かしても網膜像の移動は起こりますが、「静止した対象は運動したとは知覚しない」ことを前回のブログで述べました。これにはエフェレンス写機構が関与していると考えました。これは、外界からの入力と、眼球運動出力系をコピーして誤情報を確認することで、「静止した対象は運動したとは知覚しない」ということを可能にするそうです。

内容がとても薄く、不足している部分が多くあると思います。下記の図もわかりやすいため、載せてみました。

2012年3月6日火曜日

運動印象の成立機構

 (a)は、1点を固視し、その眼前を人が通り過ぎる場合、通り過ぎる人は、網膜上を動くが、背後の景色は動かないため、人が動いていると知覚する。
 (b)は、画面の左から右へ歩く人を、眼で追いかけてみているとすると、歩いている人は網膜上で静止しているが、背後の景色が右から左へ流れ過ぎるため、人が動いていると知覚する。
 (c)は、静止している人の前を、左から右へ歩き去る場合、人と景色は網膜上を右から左へと移動し、網膜上には多くの運動情報が与えられているにもかかわらず、外界の運動を知覚しない。

上記(b)(c)となると、動く対象を眼で追うときのように網膜上で対象の移動がない場合、および歩きながら景色を眺めた場合のように網膜に動きがあるのに動きを知覚しない場合を生理的機構では説明できないとされています。
Gibsonによれば、観察場面全体に含まれるすべての情報が、対象が動いているのか、観察者が動いているのか、その両方なのかを知らせてくれると述べています。

私の周りでは、MMTやROMには問題ないのにもかかわらず、(a)(b)(c)の混合した場面になると、転倒してしまうケースをよく聞きます。対象が静止している中で動いていくことは上手な方が、対象が動いているとそれだけで立位保持ができずバランスを崩す患者さんもよく経験します。

思い起こすと、私のリハビリは上記の絵を単体【特に(a)】で行う場面が圧倒的に多く、特に上記が複数に交えた場面を設定したリハビリが非常に少ないと気付きました。転倒患者さんに対し、筋力低下や認知等の言葉一つで片づけてしまう私。少しでも考えるセラピストになるように、明日はいろいろな場面設定で分析していきたいと考えています。