2021年7月24日土曜日

アイデンティティと精神的健康の関連について

 過去のブログ作業療法士の需要と供給についてのところで、アイデンティティに触れました。


 今回私が読んだ論文(田端ら、2012)には、アイデンティティが確立するということが精神的健康をもたらす可能性が示されておりました。


 この論文によると、精神的健康の維持にはネガティブな出来事により自己がダメージを受けることがあっても、そこから立ち直れる「レジリエンス」を備えていることが条件となっているようです。


 例えば失敗体験によるストレスレベルが同じだとしても、ひどく落ち込んでいるときと充実して元気いっぱいなときでは、受けるダメージが異なる可能性があります。つまり、レジリエンスが備わっていれば、どんなストレスにも前向きに対処できそうですし、そもそも捉え方が大きく変わる可能性がありそうです。


 そして、アイデンティティへの認識が重要であればあるほど、主観的幸福感との関連性もあることが示されておりました。


 このことから、アイデンティティの確立は、レジリエンスを高め、主観的幸福感を高める可能性が期待されそうです。


 主観的幸福感が高いことは、おそらく充実した人生を送っているという指標になると思います。


 やはり多くの作業療法士が抱えるアイデンティティクライシスは、今後の自身の人生におおきな影響を与えそうです。どうせ仕事をするなら、充実した毎日を送りたいです。

 

 もちろん、作業療法という仕事に満足できないのなら、一度きりの人生、他にやりたい仕事をみつけた方が、幸せになりそうです。


 次にレジリエンスや主観的幸福感が高いひととの健康寿命との関連性についても調べてみたいと思います。


 いやいや仕事をして、病気になることを想定した高い保険料を払って、病気になるというパターンよりは、楽しく充実した人生を過ごし、いつまでも元気に過ごしていきたいものです。


 現代は仕事に対する捉え方が多種多様になっているようです。資格をとったからといって、必ずしもその仕事をしなければならない、というわけではないと思います。いろんなことにチャレンジすることは、決して逃げではないと思いました。


 当たり前ですが、給料は私たちの生活を支えるうえで大切です。しかし、ある程度の給料をもらい、派手な生活を送らなければ十分に生きて行けそうです(正社員は本当に安定しているのか)。


 高級な給料を求めるのか、安給料でも納得した仕事にありつけるのかどうか、どちらが重要であるかは人それぞれだと思いますが、私の場合は後者なのかもしれません(お金はあればほしいです)。

2021年7月20日火曜日

「揺する」ことの効果について

  私はタッチングの研究を行っていますが、現段階では「ストローク」のみの研究に留まっています。

 

 ストロークの他にも臨床で触れる方法はいろいろあると思います。私の場合は、皮膚のみをgraspしたり、筋をしっかりgraspしたり、皮膚・筋の伸長を促すような触れ方をすることがあります。


 なかでも自然と臨床で実施するのが、「揺する」タッチングです。どの位の強さで、どの位の揺れを引き出すのかについて、全く統一が確立しているわけではありません。これは患者さんによって大きく変わるので、統一性を図ることはかなり難しいです。


 この「揺れ」によって、患者さんの動きが良くなったり、心理的なリラックス効果を得られることを多く経験します。


 この研究はまだまだ少ないようですが、これらの効果の要因として胎児がお腹の中にいるときの「揺れ」と羊水によって刺激される産毛の「揺れ」を思い出しているのではないかという考えもあります(久住、2018)。


 また、揺らすことで、全身の関節や筋も動きますし、それに伴う支持面との接触によって緊張した筋が緩んでくることも考えられそうです。


 先ほどリラックス効果といいましたが、このリラックス効果により、消化・吸収、心臓や呼吸、排便、免疫、ホルモンなどの動きを調整する自律神経の動きが活性化される可能性もあるのではないかと思います。


 様々なメカニズムが複雑に絡み合って「揺れ」の効果が反映されるのかもしれません。私は専門ではありませんが、精神科の患者さんにも提供することに意義があるのではないかと考えております。


 心理的要因と関連しているという頭痛や慢性腰痛の方にもどれほどの効果をもたらすのか気になるところです。

 

 現在課題としている研究を終えることができたら、自律神経指標や心理尺度、エコーなどを用いてぜひ検証してみたいと思います。