2012年7月2日月曜日

ホメオタシスにおける神経とホルモンの関係について


少しでも学生さんの手助けができればといっておきながら、前回はとんだ話をしてしまいました。再度、解剖・生理学を中心とした話に戻していきたいと思います。

前回、ストレスと自律神経の話をしました。今回は、ホメオタシスにおける神経とホルモンの関係から、
「もし血圧が急に低下した場合」
を想定し、文献をひろいながらまとめていきたいと思います。



 自律神経は内分泌系とともに、体の内部環境を一定に保つ働きをしています。これをホメオタシスといい、交感神経と副交感神経が密接に関連し合って働くことが大前提となります。しかし、ストレスやそのほかの原因で、この2つの神経系のバランスが崩れると、それぞれの神経系に機能的な異常が現れてきます(例えば自律神経失調症)。具体的な特徴は、脳や内臓などの器質的な病変がほとんどみられないことです。頭重感、倦怠感、のぼせ、めまい、冷感、動悸、息切れなどが挙げられるそうです。

 次にもし、血圧が急に低下した場合、具体的にどのように働くのでしょうか。出血などによって血圧が急に低下した状態は、血液の循環が不足するので、あらゆる組織や細胞を生存の危険にさらすことになります。こうした状況で真っ先に働くのが神経系のルートです。

 まず大動脈弓と頚動脈洞、腎臓にある受容器により、血圧の低下がキャッチされます。「血圧が低下している」
という情報が延髄の血管運動中枢に伝わり、血管運動中枢は交感神経に働きかけて心臓の収縮力を高め、心拍数をあげるように指令を出します。同時に、手足などの末梢血管を収縮する指令も出されるので、脳や心臓などの生命維持に欠かせない器官に、優先的に血液が送られるようになります。交感神経の働きはそれだけでなく、副腎髄質に働きかけてアドレナリンやノルアドレナリンを分泌させ、細動脈を収縮させます。
 このような機序で血管の収縮を促し、血圧を上昇させますが、あくまでも一時的な緊急処置に過ぎません。次に内分泌系の機能が出番となります。
 血圧の低下をキャッチする受容器の1つに腎臓があります。腎臓に情報が伝わると、腎臓の輸入細動脈にある傍糸球体細胞から、
「レニン」
という酵素活性のあるホルモンが分泌されます。

 レニンは最終的に腎臓の遠位尿細管でのナトリウム再吸収を促し、それによって同時に水の再吸収が促されるため、血液量が増加します。血液量が増加するということは、血管壁にかかる圧力(血圧)があがることになるので血流の維持が可能となるそうです。
 これを考えると、腎臓の存在って本当に大切なのだとつくづく感じます。

※大動脈弓:全身に血液を送る際の最初のポイント
 頚動脈洞:脳に血液を送るためのルート。

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