右視床出血・脳室穿破が認められ緊急入院となった患者さんのお話です。
脳圧は更新し、入院時意識レベルは徐々に低下、左片麻痺、右側眼球偏位・両側下方偏位、構音障害が認められました。
その後は両側EVDにて経過し、約2週間後にEVD抜去となりました。
特に特徴的な症状がみられていたので、文献を照らし合わせてみました。その特徴的な症状は、
・眼球の両側下方偏位。常に下方を向いているため、前方に視線を向けるときは頚部を過伸展することになり、結果として重心は常に後方に位置します・・・SUNSET phenomenon。
・病前はおとなしかった性格であったが、スタッフへのセクハラや暴力が目立つようになっていた・・・orbitofrontal syndrome(眼窩前頭症候群)。
EVD抜去後には、この2つの問題は改善されていました。
文献を確認してみます。
<SUNSET phenomenon>
頭蓋内圧が亢進することで、通常の頭蓋内圧亢進症状に加え、眼窩上壁が押し下げられる結果、眼球が下方に転移して下眼瞼の中に沈み込んだように見える。これを落陽現象と呼ぶ。
<orbitofrontal syndrome>
眼筒に面した前頭葉の障害による症状抑制により、感情の起伏が激しく多幸性になるだじゃれや不適切な言葉,ひょうきんな言い回しをする(Witzelsucht)。
おかれた立場の判断に乏しく,社会的行動上の問題や性的異常行動等を示す 。
この二つの症状が改善した理由として、EVDによる頭蓋内圧が低下し、
・眼窩上壁に対する押し下げがなくなったこと
・視床と眼窩領域の前頭葉との連絡路が再開通したこと
と考察しました。
眼球の動きが改善されると同時に、トランスファー二人介助を要していた患者さんが、監視レベルになりました。
高次脳や視覚の影響ってすごいですね。
今後は前庭系や視覚を含めた内容も取り入れていきたいと思います。
0 件のコメント:
コメントを投稿