・特に手が開かず患者さん自身も気になっている方でした(感覚が過敏で痛みも認められていました)。手に積極的な方であることをポジティブな要素として、治療に取り入れていきました。
・トイレ時にズボンの着脱を行っていた際に、ふらつきが強く、転倒する危険性があり介助が必要な方でしたが、治療後の手の変化に伴い、ズボンの着脱が監視で実施できるようになりました。
ご自分で手を開こうと頑張りますが、余計に屈曲への抵抗を強める傾向にありました。
介入後は手の開排が可能になり、ご自分でも指を動かせる位になりました。
この後に触れても過敏性はなく、屈曲を強めることはなくなってきました。
・何故トイレ動作や歩行などにも変化がみられたのか。手との関係性はどうなのか考えていました。抹消からの問題が姿勢制御に重要な「上肢」そのものに影響を与えることは、とてつもない浅い私なりの考えがありましたが・・・。
・文献では、発達のプロセスにおいて、頭頂連合野の重要性について述べていました。サルの実験において5野と7野は、手の存在を通して、身体図式と空間認知の機能を担っており、赤ちゃんが仰臥位で空間に手を伸ばすことからこの働きがすでにはじまっていると述べています。
・今回、手が外界へ探索していくための体性感覚受容器に変化をもたらしたため、体性感覚情報(上肢や上部体幹など)や空間情報とを統合させる頭頂連合野に何らかの影響を与えることができたのではないかと、かなりポジティブな考えで、私自身をなだめてみました。
久保田競:手と脳~脳の働きを高める手
塚本芳久:臨床家のための発達科学入門.運動の生物学(2)